アラスカの旅

日 程:平成26年9月1日(月)〜7日(日)


旅 程:福岡空港→アンカレッジ→アリエスカ→タルキートナ→デナリ国立公園→チェナ
    温泉→フェアバンクス→福岡空港



 福岡空港からアラスカへの、直行便の魅力に惹かれて参加した。今回の旅行で感動したのは

アラスカの「自然の力」だった。好天に恵まれて、豪快な氷河の崩落、気高く聳えるマッキ

ンリー山脈、そして怪しく輝くオーロラにすっかり魅了された。永久凍土が残る極寒の地だ

が、その中で育つ植物の逞ましさは驚かされる。さらに僅か3か月の間に育つ、巨大なキャ

ベツには驚かされる。9か月の冬を耐え忍び、3か月の短い夏に成長する大地の力に感激し

た。




○1日目9月1日(月):福岡空港からアンカレッジ市内観光へ

 福岡空港を発つたのは、午後6時40分だった。乗客は阪急交通社の4コースのツアー

客が主で、座席は一杯だった。飛行機はJALのボーイング787機で、何となく安心感が

あった。チャーター便ということで、サービスも良く快適な空の旅だった。アラスカに着く

まで約8時間だったが、それでも十分長く感じた。 

  

     日本航空チャーター便


アンカレッジの現地時間は、9時を回っていた。黄色い専用バスで、市内観光に出かけた。

アンカレッジは人口30万人、久留米市とほぼ同じだ。しかし建物を見ると、とても大都会

に見える。地震公園からクック湾を隔てて、アンカレッジのダウンタウンが見えた。                                                                       

 

        アンカレッジのダウンタウン                   


 地震公園というのは、1964年にマグニチュード9という大地震が起き、この時の断層

が見られる場所だという。アラスカでも、地震があるのかと驚いた。


 アラスカにはネイティブインディアンが居て、州から大変優遇されているという。

「先住権」というものらしい。優遇された金で仕事もせず朝から酒を飲んで暮らしているら

しいが、幸せかどうかわからない。

  

次にフッド水上飛行場と、スピナード湖を見た。水上飛行機が、盛んに離着水をしていた。

アラスカでは、16歳から飛行免許が取れるという。飛行機の値段も200万円台からある

と言うから、手の届かないこともない。広大なアラスカでは、飛行機が足代わりのようだ。

ここら付近の感覚が、日本の常識では計れないところだ。水上飛行機の発着は日本では余り

見られないが、思ったよりスムースにやっていた。


  

湖の多いアラスカでは水上飛行機の利用も多い


 次にアンカレッジ歴史芸術博物館に行ったが、アラスカ開拓や先住民の歴史が展示されて

いる。アラスカはピヨトール大帝に時代の1867年頃、ベーリングという人が開拓したも

のだという。その後アメリカがロシアから、720万ドル(750億円)で買い取ったとい

う。博物館は、思ったより立派な建物だった。季節は秋なのに、綺麗な花が咲いていた。

エスキモーのクジラ狩りの様子や、暮らしぶりが良く判る模型やビデオが並べられている。

特に目を引いたのが、日本鋼管製という大きな油送管だ。こんな直径の大きなパイプは、当

時日本でしか作れなかったらしい。寒さに耐えるために、外側に厚い石綿で覆ってある。石

油の採れるプルードホー湾から、パイプラインを1
,300km繋いでアラスカを縦断したと

いうことだ。極寒の地で良くこれだけの難工事を、成し遂げたものだと感心した。凍土によ

る滑りにも対応できるよう工夫されているというが、アメリカのフロンテァ精神と日本の技

術の高さに改めて感服した。




     

   立派な博物館      日本鋼管の大きな油送管  北から南への1,300km


 次の宿泊地のアリエスカに向かう途中、野鳥の楽園ポッター湿原に寄った。多くの鳥たち

が餌を啄んでいたが、もう直ぐ南へ飛び立つのだろう。丁度貨物列車が湿原の外を通ったが

、数キロに亘る長い車列で度肝を抜かれた。アラスカは、大きい!。


   

    アラスカは野鳥の楽園             長い長い貨物列車


 午後6時頃アリエスカに着いたが、外は未だ明るかった。ホテル
アリエスカはなかなか良

いホテルで、外見も綺麗った。木を多く使った作りで、落ち着いた佇まいがある。


    

チェックインして時間があったので、裏山のロープウェーに乗った。切符売の窓口は、丁度

空いていた。二人で50ドルの往復切符を買おうとすると、盛んに年齢を聞いてくる。最初

何かわからなかったが、「Age?」という言葉を聞いて年齢を答えた。するとシルバー割

引のことだったらしく、14ドルを返してくれた。英語が聞き取れない中でのことで、ちょ

っぴり幸せな気持ちになった。後から来たツアー客は混雑のため、恩典が無かったらしい。


     

  ゴンドラに乗って頂上へ    山の上はスキー場      登山道もある


○2日目9月2日(火):プリンスウイリアム湾氷河クルーズ

 朝早く起きて、ウイッティアへ向かった。ウイッティア湾は第2次世界大戦のとき、周り

を山で囲まれ、水深が深く、不凍港、そして殆ど厚い雲に覆われているなどの好条件から秘

密の軍港として重用されたらしい。タナゲン湾を望みながら、北米で最も美しいと言われる

スリード
ハイウェイを走った。途中、アントン・アンダーソン記念トンネルを通った。この

トンネルはアラスカ鉄道と共用で、列車と車と交互に通すようになっている。我々のバスが

通過できたのは、7時半からだった。待つときは、30分以上待たされるそうだ。
アラスカ

はノルウエーよりさらに北にある感じだが、こちらの空のほうが明るい。天気が良いせいも

あるが、カラッとした感じがする。

  

    ウイッティアの入江          阪急貸切の氷河クルーズ船


 船から見える景色は、大きな滝や海岸に流れ込む氷河の姿だった。荒々しい自然の姿だが

、美しい。氷河クルーズ船は、滝や氷河を巡りながら、ウイリアム湾に向かった。



   

   湾に流れ込む滝      滝の水量は凄い     山は雪で覆われている



    

    氷河は海に到達     全速力だと船は高速   湾奥の氷河に近づく 


プリンスウイリアム湾に着くと、船は停止し乗客はしばし巨大な氷河に見とれた。20〜3

0mはあろうかと思える氷の壁が、聳えるように立ちはだかっている。折からの好天で、大

いに崩落が期待された。崩落の前兆として、鉄砲を打つような「ドーン」という音がする。

固唾をのんで見守る中、大きな崩落が2度あった。一斉に悲鳴や感嘆の声が上がり、船内は

異様な雰囲気に包まれた。素晴らしい情景だった!

    

                     巨大な氷河の壁  
    
 氷河崩落動画
    



 巨大氷河から離れると、船内で氷河の氷がサービスされた。海に浮かんでいる氷の塊を、

船員が網で引き揚げたらしい。

 マルガリータというピンク色の飲み物に氷河の氷が入ったものを注文したが、甘酸っぱい

爽やかな味だった。



  

    氷河氷入りのマルガリータ         海に押し出された氷塊


 下船後バスで、アラスカ野生動物保護センターへ行った。傷ついた野生動物を収容してい

るということだったが、動物の大きさには驚いた。酷寒の地で何故動物が大きくなるか、不

思議な気がする。アラスカの大きさを実感して、マッキンリー登山基地のタルキートナに向

かった。



    

  カリフォルニアから来た運転手ビルさん      珍しい白頭ワシ


  

      ヘラ鹿はウシより大きい          グリズリーベアー



○3日目9月3日(水):アラスカ鉄道でデナリへ

 タルキートナ アラスカン ロッジは、アラスカらしい木造の大きなホテルだった。アラス

カのホテルは全部木造だったが、木が豊富なのだろう。出発が10時半と遅かったので、周

辺を散歩した。刈りこまれた芝生が美しかった。外の気温は14C°位で、気持ち良い散歩

だった。

   

   木造の大きなつくりのホテル        刈り込まれた芝生が鮮やか

 今日は雲が垂れ込めていたが、出発時間になる頃晴れてきて帯状の晴れ間が広がった。ホ

テルのテラスからマッキンリー山が見えたが、余りにも神々しい姿に感動した。

  

             荘厳なマッキンリー山


 カリフフォルニアから来たさすらいの運転手ビルさんの運転する車で、タルキートナ駅に

向かった。駅は閑散としており、誰もいない。それもそのはずで、列車の時刻表を見ると1

日2本位しかない。列車はほぼ予定通り、11時半頃着いた。展望列車は2階建てで、天井

もガラス張りになっている。こんな見晴らしの良い列車は、日本には無い。

 この客車は貸切りで、スタッフはいかにもアメリカンといった感じだった。列車はここか

ら4時間半かけて、デナリを目指すことになる。


   

   力強い機関車       背が高い展望車    スタッフは陽気なアメリカン


 昼時になり1階の食堂で昼食のサンドイッチが出たが、半分も食べきれなかった。隣に添

乗員の山方さんが座ったが、要領の良い人で48名のグループを上手く捌いていた。現地ガ

イドの東さんは列車内でずうっーと説明していたが、アラスカのことは詳しく話が面白かっ

た。現地ガイドと言っても、住まいは東京だという。チャーター便専門で、この3か月だけ

アラスカに来て現地ガイドをやるということだ。


   

     添乗員の山方さん           現地がガイドの東さん


 列車はタイガの森を抜け、広大なアラスカ原野を走る。やがて分水黎(サミット)を超え

たので、いつの間にか川の流れは列車の走る方向と同じになっている。山に積もった雪は数

日前のものらしい。草原の紅葉が、美しい。



   

 紅葉が始まった草原    山頂に2〜3日前の雪が  紅葉した草原と雪山が美しい


 やがてネナナという場所で、巨大な鉄橋に差し掛かった。この橋はアラスカ鉄道の、最後

の難関であったらしい。長さが700フィート(276m)、高さが100mの鉄橋の上を

、列車はゆっくり走る。下を見るとぞっとするが、はるかに眺めるタナナ川は素晴らしい眺

めだ。



    
      
      鉄橋の下をタナナ川が流れる



    タナナ川鉄橋動画

           

  15時半頃、デナリ駅に着いた。既にさすらいの運転手ビルさんが、バスで迎えに来てい

た。少し戻る形で、ホテルに向かったが、既に紅葉が始まっていた。宿泊の「デナリ
パーク

ビレッジ」は、内外装ともお粗末だった。


   

   広葉樹は既に紅葉が始まる        デナリ パーク ビレッジ



○4日目9月4日(木):デナリ公園ツンドラウィルダネスツアー

 朝5時半、混乗バスに乗ってデナリ公園に向かった。このバスは国立公園から提供された

バスで、混乗と言っても貸切だった。デナリ国立公園は1980年から開設され、厳しく管

理された公園として運営されている。デナリに入る道は、1本しかない。この道沿い以外は

入ることはできないし、勿論野生動物に接触することも許されない。デナリビジターセンタ

ーから少し入ったところに、パークレンジャーの小屋があって手を振って出迎えてくれた。

自給自足らしく、太陽光パネルが備え付けられてあった。この公園を見てアラスカの人は、

いかに自然を大事にしているか思い知らされた。さすがラストフロンティアの国だと、感心

させられた。




 この日外気温は左程寒く感じなかったが、ウインドブレーカーに襟巻・手袋持参の完全武

装で臨んだ。休憩所で案内人の東さんと話したが、この付近は永久凍土でブラックスプルー

スなど針葉樹がよろけたように成長するという。従ってこの森を、「酔っぱらいの森」と呼

ぶらしい。




  

   パークレンジャーの監視小屋     トリクワン休憩所でガイドの東さんと 


 バスは最終ストーニーヒルという所まで行ったが、ここで見たマッキンリー山が一番凄か

った。何度も来ている現地ガイドも興奮する良い天気で、頂上まではっきり見えた。このよ

うな見え方は、まずありえないという。マッキンリー山は標高6
,196mだが、比高差は世

界一という。周りの山々が1
,000mクラスで、そこからの高さが大きいということらしい

。風があり寒かったが、感動の時間だった。


  

   こんなはっきりしたマッキンリー山が見られたのは珍しいという


 帰りにタクラット川の休憩所に寄ったが、大きな鹿の角が展示されていた。ムースの角な

ど片方で10kg以上あるというから、いかに体力があるかが分かる。バスの中からグリス

リーベアが、クランベリーの実を一生懸命食べている姿が見られた。5歳くらいの若いオス

で、本気で走れば40km/hで走るそうだ。

   

     クラット川休憩所の売店        冬籠りに備えるグリスリーベア


 7時間のバスツアーを終えてデナリ公園を後にしたが、それから又4時半かけてチェナ温

泉へ移動した。途中ネナナ駅に寄ったが、周りの景色は西部劇そのものだった。駅は廃止さ

れて、売店になっている。売店のおばさんが、西部劇時代の服装でお土産を売っていたのが

面白かった。キャンピングカーを良く見かけたが、アラスカも車でキャンプを楽しむ人が多

いようだ。

   

     西部劇を思わせるネナナ駅        豪華なキャンピングカー


 チェナ温泉に着いたのは、午後7時頃だった。夕食を済ませてオーロラ鑑賞に備えた。夜

景の撮影はやったことがないので、手探りで準備した。露出時間を8秒にして、三脚を付け

て撮影した。その結果オーロラの片鱗は捉えることができたが、その美しさを撮ることはで

きなかった。諦めて宿舎の帰ろうとした時に、オーロラの爆発があった。黄色や緑のカーテ

ンが、揺らめきながら下に降りてきた。例えようもない美しさに、異口同音に「ウァオー」

という声が上がった。この状態を爆発と言うらしいが、怪しいまでに美しいカーテンは10

数秒で消えた。オーロラはこれ一度しか見られなかったが、感激は言葉に言い尽くせないく

らいだった。




  

             オーロラの発生初期


○5日目9月5日(金):チェナ温泉ネイチャーウオーク

 昨夜オーロラ観賞で遅かったので、朝はゆっくりだった。昨夜風呂に入れなかったので、

8時頃温泉に行った。温泉と言っても巨大な岩風呂という感じで、水着を着て入ることにな

る。何となく風呂に入るという、リラックス感は無かった。しかし程よい温度で、体が温ま

った。


 10時からネイチャーウオークで、ガイドは船津さんと言って南極犬そり横断で有名な人

だそうだ。いかにも冒険家らしい引き締まった顔と身体をしている。動・植物の説明も、具

体的で面白かった。途中温泉の傍を通ったが、多くの人が楽しんでいた。 野菜類は6月か

ら9月初めまでの、3か月で育つそうだ。船津さんが育てたキャベツの写真を見せてもらっ

たが、物凄く大きい。アラスカというと植物は育たないイメージがあるが、改めて「大地の

力」というものを感じた。



   

        冒険家の船津さん            チェナ温泉


 ブラック スプルースという木の話で、自ら火事を起こり易くするそうだ。アラスカでは多

く見られる針葉樹だが、火事の原因となる油を出すそうだ。山火事の原因は雷や不始末の火

など色々あるが、苔がもぐさの役割をして油で大きな山火事になるという。何のためかとい

うと、この木の実は45℃くらいの温度にならないと弾けないらしい。子孫を残すための、

メカニズムらしい。火事の後は広葉樹が生え、又針葉樹の森になるサイクルが繰り返される

ということだ。




   

    火事の原因となる油を出す針葉樹         白樺系の広葉樹


 ビーバーの話も、面白かった。5〜6人家族で巣やダムを作るそうだが、森の生態系のサ

イクルに寄与しているということだ。ダムで出来た池はやがては木が生え、元の森に帰って

いく。自然の営みは、聞いてみると面白いものだ。ビーバーはネズミ族で歯が伸び過ぎるの

で、木を齧り続けなければならないらしい。ビーバーの皮で作った手袋は南極用らしいが、

とても暖かい。



   

       ビーバーの巣             ビーバーの手袋


 ハスキー犬舎に近づくと、一斉に吠え始めた。丁度犬ぞりカートの準備が始まったので、

犬が興奮して吠え始めたところらしい。ハスキー犬は、本能的に、走りたくてたまらないら

しい。ハスキー犬というのは、とても利口な犬らしい。犬そりは犬の集団でそりを引っ張る

のだが、リーダー犬はその中でも一番賢い犬が務めるという。南極など過酷な環境でアラス

カンハスキーは、一日1万カロリーの食事を必要とするそうだ。成人が2
,000カロリーだ

から、消耗がいかに激しいかわかる。犬舎の近くに大切な血清を運んだ、犬そりのリーダー

犬の銅像があった。



  

     50匹近くの犬舎           英雄リーダー犬バルトーの像


 ネイチャーウオークが終わって、少し時間があったので5時から氷の博物館へ行った。数人

が纏って見学するようになっている。博物館は白いドームになっており、中は2重に仕切ら

れている。外側は0℃位、内側は−10°くらいの極寒状態になっている。外側で分厚い防

寒着を貸してくれて、内側の温度を保つために纏って入場した。 中は様々な氷の作品が展

示されていたが、夫婦でコンテストに入賞するような芸術家が作っているという。氷の騎馬

像などは、見事なものだった。氷のコップにウイスキーを入れて飲む氷のバーなどは、面白

い発想だと思う。中は全て氷でできており、暫し夢心地の世界だった。


   

      光り輝く氷の博物館          防寒着を着ていても寒い



 アラスカの食事だが、概して美味しい。日本人がアメリカンに、慣れてきているというこ

ともあるだろう。コーヒーはとても美味しかったし、スイーツもいける。しかし量的にはと

てもついていけない。大体2〜3人前の、ボリュームがある。残している人も、多かった。

しかしご婦人で果敢に、完食されている人がいたのには感心する。こういう人を見ると、圧

倒されて心細くなる。こんなことでは到底、長生きは出来ないと思う

・・・。



   

 極太のタラバガニ             ブラウニーは只々甘い



○6日目9月6日(土)〜7日(日):フェアバンクス空港から日本へ

 6時半頃ホテルを出て、フェアバンクスへ向かった。アラスカは最終日まで、快晴だった

。専用機は12時に、空港を飛び立った。福岡空港には13時半頃着いたが、先ず感じたの

は蒸し暑さだった。
 アラスカの旅は天気勝負のところがあり、行ってみなければ分からな

いところがある。今回天候に恵まれ、見どころは多かった。氷河崩落、マッキンレー山、

オーロラと何れも満喫でき、「ラストフロンティア」を実感した。その中でも印象に残った

のは、ガイドの東さんが言った「大地の力」だ。極寒の地でも動・植物は逞しく生きて、営

みを繰り返していることに感動させられた。




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